INTERVIEW インターネットはクラシック音楽を救えるか? ベルリン・フィルの革新と挑戦
http://wired.jp/2013/04/19/berliner-philharmoniker/
インターネットでみるクラシック ~ これが21世紀のベルリン・フィルの挑戦だ。
日常的にクラシック音楽のあると思われるヨーロッパで、名門のベルリン・フィルでさえクラシック音楽離れを危惧しているというのはやはり由々しき 状況ということだろう。
そしてそのパートナーとなるのはソニーということだ。
ベルリン・フィルとソニーといえば、その二点を結ぶ線となるのがかつてベルリン・フィルは帝王といわれたベルベルト・フォン・カラヤンが思い浮か ぶ。
現在CD(コンパクト・ディスク)として規格されているディスクがアナログ・レコードに代わるメディアとして開発中だった時、CDの記録容量をど れくらいにすべきかを決めるのにベートーベンの交響曲第9番が収録できるサイズにしようとカラヤンが主張したという説がある。
実際にはこの説は真実ではないが、多くの人が納得できるほどにカラヤンとソニーは緊密な関係にあったわけで、CDの規格に関して「カラヤンが助言 した」とすればさらに話題にもなるとふんで意図的に風評として流したのではないかと思えるほどの関係がそこにはあった。
このソニーとの関係が物語るように、晩年のカラヤンはデジタルレコーディングなど当時のハイテクをクラシックのレコードに持ち込むなど挑戦をして きた。
その挑戦の現場に貢献し多くの演奏を提供してきたのが紛れもなくベルリン・フィルというわけだ。
今回のこのインターネットへの進出はカラヤンの時代から続くテクノロジーへの挑戦の命脈を感じる。
インターネットで演奏が視聴できるようになることで何が変わるか。
かつてコンサートホールでしか視聴できなかった音楽が20世紀以降テクノロジーの発展とともにレコードやCDやDVDといったメディアによって一 般に普及したことはどういう意味があったのだろう。
19世紀までの音楽家たちは王侯貴族や教会などの賛助を得て活動することが一般的であって、その演奏活動は誰のためかといえば彼らのスポンサーの ためであって一般人に聴かせるためのものではなかった。
しかし時代が変わり音楽を庇護する立場の貴族や教会が少なくなればその演奏活動を支えるには別の収入源を確保しなければならない。
やがて楽団とその本拠地となるホールを国・自治体や企業の助成を得ながら自主的に経営するスタイルに変わっていった。
その過程で、王侯貴族のプライベートな所有物だった音楽が広く一般的になったという変化があり、芸術性より大衆性に迎合するような動きがあったと いう指摘もある。
さらにインターネットというメディアがリアルタイムに世界を結ぶ時代になると、芸術性はさらに低俗化するのだろうか。
相手は不特定の大衆であり、意志を持ってホールまで足を運ぶほどの興味を持たないレベルの潜在的な顧客となる。
そこにクラシック音楽のコンテンツはどう勝負をかけられるのかという問いに対する答えは何よりベルリン・フィル自身が今求めているものそのものだ と思うが、私は入り口のハードルは下げてもクオリティは下げるべきでなく、むしろ伝統的なスタイルによってこそその付加価値が保てると思う。
ホールで聴いていると聞こえない楽器の音があり、メディアで再生するときによりホールでの臨場感に重きを置くか聞こえなかった楽器の音まで聞こえ るようホールでは得られないものを提供できることに重きをおくかという話がある。
誰にも答えを求められていないが、どちらかといえば、前者を採るべきというのが私の意見だ。
ホールでの鑑賞の疑似体験がその本来の芸術のクオリティに近いわけだから、極限までホールでの音響の再現を突き詰めるのがいい。
作品によっては、すべての楽器の音がよく聞こえるような音響が適しているものもあるかもしれない。
そういう特殊な作品以外はさながらホールにいるご如しのクオリティを提供することで既発のDVDメディアなどとの差別化ができると思う。
敷居の外から興味半分の人をこちらに呼び寄せるためのガイドとしてはそこまでのハードルをとことん下げることがまず有効だと思う。
YouTubeに断片的な映像や音源をアップするのはまずは手段としては正攻法で、可もなく不可もなくというところだ。
これで多くの人の興味を引くことはできるかもしれない。
ただし、クラシックのファンに限られるので、それ以外の人たちにインパクトを与えるにはまだもうひと工夫必要な気もする。
問題はむしろ顧客にいかに定着してもらうかということかもしれない。
課金のことについても話は出ているが一律149ユーロで得られるものとして誰にでもお得感があれば十分だ。
でも実際はそうではないと思うので段階的な課金のレベルを作ってもいいと思う。
初級者向けのレベル、特典映像もすべてオープンのプレミアムのレベルなどがあると、全体で取りはぐれなしの仕組みになるようにも思うがどうだろ う。
でも、一律で問題ないと言い切るところがドイツらしいのかもしれない。
カラヤンだったら何というか訊いてみたい。