http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130228/268772/
シリコンバレーという名前は、いかにもニューヨークとかロサンゼルスのような都市名というイメージがあるけれど、実際にはこのような名前の都市はなく、アメリカ西海岸のサンノゼなど複数の都市を含む地域の名前である。
オラクル、アップル、Google、シスコなどの元々シリコンバレー出身の企業に加え、マイクロソフトなどもここに拠点を置いているらしいから、 大手IT企業=シリコンバレーという図式化がいよいよ進んでいるようだ。
それにしても昔から同業者は同じ地域に集中する傾向があるのはなんとなくわかる。
しかし、冷静に考えればなぜそうなるのだろう。
ある製品と部品、流通などひとつの製品を取り巻く多種の事業体が近い拠点に集まることは昔からある。
部品の調達から流通までをコントロールしやすい点は、大きなメリットにはなるだろう。
しかしそれがIT企業になるとハードウェアを持たない企業も多く、部品調達も流通も関係なくなると地域という特性はたいした意味を持たなくなる。
ここに集う企業は、そうした製造的メリットでここに陣取っているわけではないことは明らかだ。
やはりブランディングという意味合いが大きいと思う。
私は酒はあまり飲めないが、聞いた話によれば中身がバーボンと似ていても、ケンタッキー州で作られたもの以外はバーボンとは言わないということ だ。
バーボンとラベルに書きたければ、ケンタッキーに行くしかないということになる。
また、昔ビートルズが登場したころ、彼らの出身地リバプールに流れる川にちなみ「マージービート」なる看板のもとに様々なバンドがデビューした。
その後リバプールと関係ないバンドもマージービートの仲間として売り出していたことを考えれば、これは単なるブランド戦略である。
つまり、そういうことだ。
「一流のIT企業」を名乗りたければシリコンバレーに拠点を持つ意味がある。
シリコンバレーのブランドイメージは強力なのだ。
だからこそ、みんなシリコンバレーを夢みて、シリコンバレーへ向かうのではないだろうかと思う。
近場に世界の有名な企業がひしめいているとなれば、技術者は当然実力があればどんどんステージを変えて上へ上へと駆け上がることだってできる。
ここに集う企業はそんなことは大して気にしないのだろう。
企業の浮沈はいわば世の常、それより自分たちが世界を動かしている、その意識の方が強いはず。
そうした企業論理を超えたところにシリコンバレーの”大きさ”を感じる。
しかし、国内に目をむけると日本にこうしたIT企業の本拠地はどこと聞かれてもぱっと浮かばない。
これはなんとも寂しい状況だ。
近場でライバル同士がしのぎを削ることもなければ、全体でのレベルアップも時間がかかるだろう。
それに業界の新しいトレンドも生み出せないだろうし、世界を見る視点にもなかなか行き着かないのはこうしたところに関係がありそうだ。
国内にいてこんなことを書いていても漠然としかしないこの”違い”。
それを体感するためにだけでも、まずは一度シリコンバレーに行き、実際に見るべきなのかもしれない。