砂糖は体に害を及ぼすという情報をよく耳にするようになった。
だからといって、砂糖の摂取を止めるか必要があるか否かどうも判断に困るところがある。
本当に砂糖は体によくないのだろうか。
砂糖は古くはサトウキビの採れるところでは栽培されていたようだが、紀元前4世紀にインドに遠征したマケドニアのアレキサンダー王がかの地で砂糖に遭遇したのがヨーロッパ人が見たおそらく最初ではないかといわれる。
その後次第に広くサトウキビが栽培され砂糖の精製法が確立していったわけだが、もっとも砂糖が世に知られたのは11世紀に十字軍がヨーロッパに持ち帰ったときだ。
その同じ時期にマルコ・ポーロも東方見聞録に中国でみた砂糖について紹介しており、砂糖はヨーロッパの上流階級の間で使われるようになったようだ。
サトウキビをはじめとしてテンサイやサトウヤシなど様々な植物から作られるようになり、確実に甘味料としての地位を確実にしていった。
そのあとは需要の拡大と生産の効率化の歴史である。
現在は大資本を投じて組織的に砂糖の製造が行われる。
酒や煙草、そして塩による人体への影響はさまざまに話題にされてきたが、同じように食品に使われている砂糖についてはあまり注目されることがなかった。
しかし、大量に摂取することがどうやら人体に多分に負担になることが指摘され続けているのだ。
Wiredの記事によれば18万人が砂糖に関する健康被害により命を落としているという驚くべきデータがある。
砂糖入り飲料によって世界で18万人が死んでいる:研究結果
http://wired.jp/2013/04/05/sugar-drinks/
以前米国で、医師たちが砂糖の人体への悪影響について指摘、この食品についてはたばこや酒と同様に課税すべきとした事件があり、このときは砂糖、砂糖入り飲料のメーカーなどが断固反対、砂糖についての論争を起こすまでになった。虫歯、糖尿病、肥満のリスクはよくいわれることであるが、膵がん、多動性障害とも関連があるとの指摘がある。
砂糖の消費量は食品の嗜好の違いによってなど、地域によってその差は大きい。
日本は世界全体からみればその消費量は少ない部類に入る。
確かに以前米国でみたマクドナルドのコーラのLサイズはバケツのようであった。
あれを飲み干せるのはやはり人種の違いなのかと考えたものだが、実際のところ砂糖のリスク面は我々と変わらないようである。
甘いもの好きの国際比較
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0442.html
とはいえ、世界で低い水準だからといって安心することはできない。砂糖を使った食品、その中でも特に飲料水に含まれる砂糖の量が危険であるとの指摘があり、炭酸飲料1本(350ml)で角砂糖8個、缶コーヒー1本(190ml)で角砂糖約4個もの砂糖が使われている。
1日に缶コーヒーなど何本も飲む人はそれだけで糖分摂取量オーバーであり、これは確かに健康維持の面でのリスクになりうる。
砂糖入り飲料にみる糖分量
問題は砂糖に関する健康リスクの存在について、その実状が一部の人たちの権益を守るために公にされていないように見えることである。
もしそうであるとすれば、それは放射能の被害をただいたずらに拡大するだけに放置して正しい情報を公開しないどこかの政府と似たような話ではないだろうか。
国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機構(WHO)は2000年の東京におけるフォーラムでの安全宣言で次のように謳っている。
〈東京宣言本文〉
自然の恵みの産物である砂糖は、古くから私たちの食生活にとって欠くことのできない食品として生き続けています。「甘さ」は、人間が本能的に求める味覚であり、砂糖の天然の甘さは、私達の心を癒し、生活を豊かで潤いのあるものにしてくれます。 また、砂糖は私達の体と脳のエネルギー源として、大切な栄養素であり、脳内のセロトニンを増すことで、精神を安定させます。 ところが昨今、砂糖と健康に関する様々な誤った俗説が流布されていましたが、幸いなことに、近年、FDA(米国食品・医薬品局)やFAO/WHOの権威ある専門機関による科学的な検証に加え、2日間に渡るフォーラムに於いて、それらの俗説が科学的に誤りであることが、より明らかにされました。 私達は、本日のフォーラムの結論として、21世紀に向けて、砂糖が安全で有益な食品であることを、ここに宣言いたします。
これは本当に信頼できる情報に基づいた声明なのだろうかと勘ぐりたくなるほどの砂糖擁護宣言となっている。
確かに砂糖から生じるブドウ糖は脳のはたらきを活発化させる作用があり、それは明らかなメリットだ。
この宣言だけをみると、従来のように与えられるだけ摂取して問題ないという捉え方をしかねないが、あくまで摂取量に配慮した場合の話ということを考えて読む必要があるだろう。
これまでが摂取過剰気味であり、そのままではやはり危険だということなのだ。
この宣言文を演出したサイドに砂糖関連の事業のステークホルダーがいないことを祈るばかりだ。
ともかく砂糖の摂取量を減らし、甘味に関してこだわりのある人は果物や芋などの自然な甘味に切り替えていく生活習慣の転換があるいは我々の未来の健康をもたらしてくれるかもしれない。
あなたも明日からでも始めてはいかがだろう。