「3D印刷可能な食料」にNASAが助成金
http://wired.jp/2013/05/22/d-printable-food-nasa-wants-a-taste/
つい先日、本物の銃が3Dプリンタで作れるという記事があったばかりだけれ ど、こんどは食品だ。まだ3Dプリンタというものの実物を見たことはないのだけれどもさながらなん でも飛び出す魔法の小箱といったところだ。
栄養分のバランスを考慮した食品を作るなどのオプションはコンピュータを使っ て様々にアレンジできそうだし、いろいろな分野で利用されうる可能性がある。
たとえば、次のこんなシーンが浮かぶのは私だけではないだろう。
朝起きて、モニタのスイッチを入れる。
「おはようございます」とモニタから音声。
あなたはモニタに向かって舌を出しすぐさま手元のボタンを押す。
「少しお疲れのようです。タンパク質とビタミンB1を多めにとることをお勧めし ます。」とまたモニタから音声。
そして画面に出たメッセージにあなたは「OK」を押す。
3Dプリンタが動き出し、あなたの朝食が”印刷”される。
出てきた食品はパンにベーコンエッグで、味も申し分なし。
これで、現代の生活習慣病の類もぐんと減るだろうし、食べたものがすべてデー タ化されるので健康管理もばっちりだ。
そういう日々が割と身近にまで迫っているのかもしれない。
しかし、どうだろう。
それで食糧難を乗り切る秘策になりえるのか、そこがどうも疑問である。
世界の最大人口が95〜100億とあるので、今の人口の1.5倍程度というところだ。
しかも、今の人口でさえ、1日に4〜5万人の餓死者が出ている状況にあって、 これを本質的に打開するのがプリンタようなツールでないことは明白だ ろう。
地球規模でみた場合の食糧生産量は年間23億tといわれており、人間一人あたり 必要な食糧の2倍近くにも登る。
それが広範囲にわたる地域には行き渡らないのだ。
まず、政情不安などにより産業が成り立たず、国民が必要な食糧を得るだけの経 済力を持ち得ないということだ。
かつて飢餓によって滅んだ国家は多く存在するし、こうした国が飢餓とともに滅 んでいく可能性もある。
国を動かす為政者が自分の利益ばかりを優先するような統治をしていては同じこ とが繰り返されるのみであり、政治に対する意識が大きく変わらない限り解決 の道は見えてこないだろう。
次に、先進国の経済的優位性による食糧の事実上の収奪という原因もある。
グローバリゼーションの浸透とともに先進国には世界中から様々な商品が滞りな く生産され流通されるようになった。
しかし、それは生産者たる途上国の現実としては経済的理由により輸出用の商品 を生産するために自身の生活の糧を奪う状況に陥っている。
しかも、その収奪された食糧は購入した先進国において有効に消費されておらず 何割かが無駄に捨てられているのだ。
この傾向は特に日本ではひどく海外から輸入しているおそよ1/3を捨てていると いわれる。
こうした不均衡が正されることなく食糧問題の解決はあり得ない。
日本人は、「まずは我々から」という意識を持たなければいけないのだ。
とは言えこの3Dプリンタ、まずは飢餓で苦しむ国の人々にこそ導入されるべき ものだろう。
原料となるカートリッジが揃うなら、いつでもどこでも質・量ともに均等な食糧 が出てくるのだから。
ただ、必要となるその数は想像を絶する数に登るであろうし医療器具と同じで事 故が許されないものであるため品質の保持にも多くのコストを覚悟しな ければならない。
あくまで今ある危機に対処できるツールとしての価値を期待するものだが、ぜひ とも実用化してほしい。